2025.11.21ミツビシギャランVR-4
1987年10月に発表され、同年12月から発売されたギャランVR-4は、WRC(世界ラリー選手権)に参戦するために開発されたマシンです。
当時の三菱は、WRCで勝利するためにこのお車に全精力を注ぎこんでいました。
少し専門的なお話にはなりますが、当時国内では、センターデフを採用した4WDは導入され始めたばかりでVR-4にもこの技術が搭載されました。常に4輪に駆動力を伝えることができるフルタイム4WDのおかげで
雪道での走行性能は抜群で冬のレジャーシーンでも大いに活躍していたという記事も見られます。
VR-4は三菱がWRCに出て行く足がかりとなったという意味でも、今なお記憶に残り続ける名車ですね!
実車を直接お目にかかることは今では少なくなりましたが、オーナー様は道外に足を運んで道中を自走しながらフェリーで北海道まで持ってきたとお話されていました。
私自身も三菱の車を乗り継いでおり、つい先日まで後継車であるギャランフォルティスのラリーアートに乗っていたため、今回のご依頼は非常にテンションがあがるものでした。このような貴重なお車をお任せいただき大変光栄に思います。
それでは、さっそく作業の様子をご紹介します。
お車の状態ですが、時の流れを感じさせないくらいにコンディションが良く、前オーナー様の頃から大切に扱われていたのだと伝わってきました。
しかしながらリフレッシュが必要な箇所もあり、オーナー様とも打ち合わせながら作業を進めました。

いつも通りタイヤ周りからスタートです。
インナーフェンダーからタイヤとアルミホイールの順に洗浄を行います。
今回はタイヤ周りに限らず、なるべくお車の素材に負担がないような洗剤やケミカルを選び、どうしても落とせない汚れには成分が弱いアルカリ性や酸性の洗剤やケミカルを使用しました。


アルミホイールにはグリスが付着していました。

その後にボティの洗車をしてから細かい箇所の洗浄です。
オーナー様も気にされていたヒンジの汚れから着手しました。
グリスなどの油分が酸化してかなり固着しており、カチカチに固まってしまっていたので中性タイプの洗剤ではなく、アルカリ洗剤で時間をかけて根気強く作業しました。
全て除去してしてしまうと潤滑が不足してしまい、動作が悪くなりきしみ音が発生してしまうことがあるので強力な洗剤は使用しておりません。

ボティの洗浄が終わりましたら次は鉄粉除去に移ります。
塗装表面に多少のざらつきがありましたので、中性タイプの鉄粉除去剤を噴霧し、クレイパッドを使用して丁寧に除去。
これにより、次の工程への下地が整いました。

この流れで窓ガラスのウロコと油膜取りを行います。
ウロコや油膜の付着は多少見られましたが、すでに軽く撥水していましたので既存のコート剤を剥がし、ガラス面をしっかりとリフレッシュ。
新たに撥水コートを施工しました。
いよいよ磨きに突入です。
塗膜の厚さを計測して塗装の状態を把握します。
オリジナルの塗装に熱や磨きすぎたりするなどの負担をかけないように塗膜を細かく計測し、パネルごとにバフやコンパウンドに機械なども変えながら注意深く作業を進めました。







細かい箇所も抜かりなく。

水シミや細かな傷が蓄積すると、塗装面にダメージを与え、くすみの原因にもなってしまいます。
塗膜には限りがあるため、磨き作業にも当然限界があり、写真にもあるように塗装を浸食してしまった水シミ跡や傷を全て完全に除去するのは難しい場合もあります。
それでも、適切な下地処理と丁寧な磨きによって、現状からは見違えるほど美しい仕上がりへと変化させることが可能です。



塗装に固着したウィンドウモール下の蓄積汚れやリアスポイラーのくすみも綺麗になりましたね。
バンパーはPPが主流で、スポイラーはABSやFRPなど鉄板ではないため、鉄板と比べると熱に弱く繊細な材質なのでより慎重に磨く必要があると考えます。
磨きを終えて下処理が終わりました。
その後に洗車と脱脂を行い、コーティング施工して保護をして完成となります。
パール塗装ではなく、繊細なソリッド塗装ですので塗り込みや拭き上げも慎重に行いました。

オーナー様からスゴイ!綺麗になった!とお褒めの言葉を頂き安心しました。
製造から35年経過しているお車ということを考えれば、コンディションは良かったものの、それ相応の汚れや傷はございました。
そういったものを可能な限り除去し、リフレッシュしたことでお車全体の印象がグッと引き締まりましたね。
これからも末永くお乗りいただけると思います。
この度は当店にお任せいただき誠にありがとうございました。
河内


